グラミー賞で8部門にノミネートされたケンドリック・ラマーを知るための4つのトピック
2018/12/18 コラム
日本のみならず国外のフェスファン・音楽ファンが新潟県苗場スキー場に集まるフジロックフェスティバル(通称「フジロック」)。
苗場での開催が20回目となる2018年、2日目のヘッドライナーがケンドリック・ラマーということに驚く声も多かったように思えます。
「日本ではまだまだ知名度が足りないのでは?」という中での抜擢でしたが、パフォーマンスは大成功を収め、NHKの『おはよう日本』でインタビューも放送されました。その結果、日本での注目度も急上昇。
これからのアメリカのヒップホップシーンを引っ張る最重要人物、ケンドリック・ラマーについて知るべき4つのポイントと、彼の必聴ソングをご紹介します。
1. ギャングとドラッグに囲まれ貧しく育つ
本名、ケンドリック・ラマー・ダックワーズ、1987年生まれ(2018年で31歳)。アメリカの中でも貧困率が高く犯罪率も高い都市の一つとして悪名高い、カリフォルニア州南部コンプトンで生まれ育ちました。
ケンドリックの父親はシカゴ最大と呼ばれたストリート・ギャング、”Gangster Disciples”のメンバーでした。生活は貧しく、ダックワーズ家はセクション8と呼ばれる低所得者向け家賃援助プログラムを受けて暮らしていました。この生まれ育った環境は1stアルバム “Section.80” という名の元になるなど、そこで感じたことをベースとした曲を多く作っています。
2. 早熟な才能にDr.Dreも注目
10代のころから ”K-Dot” というステージネームでミックステープを制作し、地元のインディーズ・レーベルTDEと契約。
2009年、ステージネームを本名に改め、”Kendrick Lamar EP” をリリース。2010年には”Overly Dedicated”をリリースしました。
これはのちに無料配信に切り替え100万ダウンロードを超えることとなりますが、名を広める良いマーケティングとなったようです。
同作に収録された ”Ignorance Is Bliss” のMVをYouTubeで見た、世界で最も影響力と才能のある音楽プロデューサーのひとりであるDr.Dreが才能を見出し、ケンドリックに共作を提案。
それをきっかけに、2012年にDr.Dreによる大手レーベル・Aftermathと契約しています。
Ignorance Is Bliss
3. 共感を集めるストーリーテリングとドープな音でスターダムへと
2011年、ケンドリックは1stアルバム ”Section.80” をリリース。テレビやラジオでのプロモーションなしで販売されたにも関わらず、初週に5,300枚を売上げました。
80年代、ロナルド・レーガン政権時代の若年層や貧困層にクラックが蔓延したことで、「クラック・ベイビー」と呼ばれた子供たちの抱える問題を当事者として描き、評論家より好評を得ます。
そして2012年には ”Good Kid, M.A.A.D City” を発表。全米での売上は100万枚を突破し、第56回グラミー賞の7部門にノミネート。
2015年に発表した “To Pimp a Butterfly” では、アフリカン・アメリカンの歴史を深く描き、所謂ブラック・ミュージックのクラシックのサンプリングをサウンドとリリック両面で多く取り入れ、第57回グラミー賞で最優秀ラップアルバムを受賞しました。
また、この頃からスポーツウェアブランドのリーボックのイメージキャラクターと活動したり、カニエ・ウエストのサポート・アクトを務めたりと、その存在感をさらに高めていきます。
4. ジャーナリズム的描写が認められ、歴史的快挙を達成
2017年に発表された “DAMN.” は、第60回グラミー賞でラップ部門を制覇。
2018年には、米国内の優秀なジャーナリズムに対して与えられるピューリッツァー賞を受賞。ラッパー初の快挙として大きく注目を集めました。
“DAMN.” ではトラップ・ミュージック(ヒップホップの一種)を取り入れたり、今までのアルバム以上にパーソナルな語りでリスナーがリリックと自分と重ねやすかったりと、新たな試みが見られるアルバムです。
しかしピューリッツァー賞に関しては、本作単体というよりもそれまでの成果を讃えたものではないでしょうか。
そんな中での来日となった2018年。フジロック前には公的文書の黒塗りをパロディにした街頭広告が大きな話題となり、8月には地上波初インタビューがNHK「おはよう日本」で放送されました。
必聴ソング
ケンドリック・ラマーについては、特に日本ではピューリッツァー賞の受賞やその主義主張に注目が集まりやすいですが、聴いてみればわかるはず。単純に音がいい。だからこそここまで商業的にも成功したのでしょう。
できればアルバムを通じて、そして歌詞にも注目しつつ聴いてみて欲しいところですが、その中でも代表曲の中から3曲をピックアップ。ぜひ聴いてみてください。
Alright (”To Pimp a Butterfly” 収録)
HUMBLE.(”DAMN.” 収録)
All the Stars (『ブラックパンサー ザ・アルバム』収録)
(Ah)
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