3分半のホラー×ロック!まるで『シャイニング』な、映像でも楽しめるHYDEの音楽
2019/01/21 コラム
ホラー映画『シャイニング』。ホラーと言っても、咄嗟に悲鳴を上げたくなるような恐怖ではありません。描かれているのは、どこにでもいそうな人間がじわじわ狂っていくさま。
後半になると主人公は完全に狂気に支配され、斧でドアというドアを叩き壊しながら妻と息子に迫ります。よく知られているのは、主人公がドアの割れ目に顔をくっつけて中を覗き、”Here’s Johnny!(お客さまだよ!)”と満面の笑みで叫ぶシーンでしょうか。
作中屈指のクレイジーなシーンであり、そのインパクトの強さゆえにネタにされることさえあるシーンでもありますが、大切にしていたものを笑顔で壊しにかかる姿には背筋に嫌な汗が流れるタイプの恐怖を感じます。
『シャイニング』が制作されたのは1980年。もう40年近く前の作品ながら、いまだにこの映画をオマージュしたMVが登場しています。
中でも個人的にピックアップしたいのが、HYDEの「WHO’S GONNA SAVE US」です。
意味深なタイトルと仮面の男 最後まで目が離せない3分半
タイトルは直訳すると「誰が僕たちを救ってくれるんだ」という意味。
『シャイニング』をオマージュにするにあたって、やはりあのクレイジーなシーンを切り取ってきました。ただ、違うのはラストの展開。斧を振り回していた仮面の男は、最後にその仮面を外します。するとどうでしょう。メカニカルな仮面の下からは彼が斧で打ち倒した男と瓜二つの顔が現れ、こちらを睨んできます。
「最後まで動画を見てもらえるようなMVをつくる」というコンセプトで制作されたのこと。有名な映画をオマージュして展開を予想させつつ、仮面の男の正体も考えさせる。
インタビューでHYDE自身、「自分を救えるのは自分しかいない」と回答しておきながら、MVではもう一人の自分に打ち倒されてしまうというまさかのオチが待っていましたが、ここまでたった3分半。オチも含め、たしかに最後まで目が離せませんでした。
HYDE「ロックの気持ち良さって、絶対、万人の物だと思う」
HYDEはこれまでL’Arc~en~Cielとして活動しながら知名度を高め、VAMPSとして世界のロックシーンに挑戦してきました。そんな大きな肩書きがありながらソロで動く理由のひとつとして、ソロのフットワークの軽さを挙げています。
バンドでは難しいことでも、ソロなら自分の裁量で決定できます。そこで自分の大好きな世界観を思う存分表現したいという思いがあったようです。そして彼が好きな世界観といえば、ホラー。
そもそもHYDEがホラー要素を取り入れたのは『WHO’S GONNA SAVE US』のMVが初めてではありません。自身のバンドにVAMPSというおどろおどろしい名前をつけてみたり、13
や666という数字をアルバムやライブに仕込んでみたり。楽曲の中に限らず、いたるところにホラー要素がちりばめられています。
そして、HYDEが掲げる目標のひとつに「ロックをメジャーな音楽として楽しんでもらう」というものがあります。その目標と相性バツグンなのがハロウィンでした。
HYDEは毎年HALLOWEEN PARTYを開催したり、ハロウィーンをテーマにした楽曲を制作したりするなど、日本でハロウィーンが定着する前から率先してこの文化を牽引してきました。
とくにHALLOWEEN PARTYにはももいろクローバーZ、超特急、ジェジュンなど、ロックバンド以外の面々も集まります。出演者は全員仮装。参加者も仮装して会場にやって来ます。HYDE曰く、「年々みんなの仮装のクオリティーが上がっている」とか。
彼がロックにホラーを取り入れてくれたおかげでハロウィーンと結びつき、結果的に新たなファンを獲得して日本国内のロックシーンの活性化につながっている。そういう部分も多分にあると言えます。
2018年、10年ぶりにソロ活動を再開したことで、今後はもっと自由なロックとホラーの組み合わせが見られるかもしれません。
2月にはX JAPANのYOSHIKIをピアニストに迎えたニューシングル『ZIPANG』のリリースが控えています。
今後も、耳でも目でも楽しめるホラーなロックを楽しませてくれるはずです。
(恒記)
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