レコードの人気がいま世界中で再燃している理由とは
2018/11/29 コラム
近年アナログレコードの人気が世界中で再燃しており、生産量、売上量ともに右肩上がりの傾向があります。
ヴァイナル盤のレコードが実用化されたのが1940年代後半。それ以降、カセットテープ、CD、MD、音楽ダウンロードサービス、音楽ストリーミングサービスなど、音楽を聴くためのメディアや手段は数多く生まれました。
それにもかかわらず、レコードはなぜ今もなお愛され続けているのでしょうか。この記事ではその理由を明らかにすべく、レコードならではの魅力を解説します。
音が良い(周波数が制限されていない)
レコーディング時の録音環境やスピーカーなどの再生環境にもよりますが、アナログ音源であるレコードの方がデジタル音源よりも演奏の再現度が高いとされ、「自然な音」「あたたかく立体的な音」と表現されることが多いです。
たとえばデジタル音源であるCDに音の情報を記録するとき、アナログからデジタルに変換するサンプリングの過程で、周波数は約20Hz~20,000Hz(20kHz)までに制限されます。
20Hz~20,000Hzは、人間の耳で聴くことができる周波数のおよその範囲(数字が小さいほど低く、数字が大きいほど高い音)。CDはコンパクトディスクの略ですが、言葉の通り情報をコンパクトにするために聴こえないとされる周波数をカットしているのです。
一方レコードの溝には、20Hz~22,000Hzの範囲を超えた周波数の音が記録されています。サンプリングをせずに音の波をそのまま刻んでいること、それゆえに情報量が多いことが、レコードの音が心地よく聴こえる要因になっていると考えられています。
物として実感がある
一番よく見かけるLPという種類のレコードは、直径30cm(12インチ)で重さが180g。それを入れるジャケットはおよそ31cmx31cmの正方形です。大きめのバックじゃないと入らない大きさですし、10枚入れれば1.8kg。重くてたまりません。部屋で保管するにも場所を取ります。
この、ともすれば欠点となる大きさと重さが、逆に魅力であるといえるのです。
大きくて重量感があると、手に取って触れたときの感覚が強いものになります。大きいジャケットは迫力があり、アートワークを細部まで鑑賞することができます。また、ジャケットの中に入っている歌詞カードやライナーノーツ(解説書)を眺めるのも楽しみのひとつです。
保管するための場所は必要ですが、作品を所有している実感を持たせますし、ディスプレイすればインテリアにもなります。
手間がかかるのが楽しみに
レコードを再生するためには、多くの手順を踏む必要があります。
聴くレコードを決めたら、指紋が付かないように気を付けながらジャケットから取り出す。レコードをプレイヤーの上に乗せる。回線数を設定し、セッティングした針を落とす。A面が終わったらB面にひっくり返して続きを聴く……。
このような少し手間のかかる作業は「儀式」と称されることがあり、楽しさや贅沢さを見出す人もいます。「儀式」を経て音楽を聴く時間は、スペシャルなものです。
デバイスにダウンロードした楽曲はクリックひとつで再生することができますし、プレイリストを再生すれば名前を知らないアーティストの曲をBGMとして聴くこともできます。
気軽に、なんとなく音楽を流して聴く楽しみがある一方で、ひとつの音楽に向き合うことの楽しみがあります。レコードは後者の楽しみ方と相性が良いといえるでしょう。
まとめ
音楽ストリーミングサービスの登場により低音質の楽曲であれば簡単に、大量に手に入れることができるようになりました。そんな今だからこそ、レコードの音質が改めて評価され、欠点が魅力に反転しているといえるでしょう。
試聴ができるレコードショップも多いので、もし興味を持ったらぜひお店に足を運んでみてください。
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