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2010年代のサブカル少女の生きづらさ――シバノソウインタビュー

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音楽は聴く人同士を繋げる。時代時代でそれぞれに、教室にいる大半の生徒が聴いていた音楽がある。

ある時代ではMr.Children、またある時代では宇多田ヒカル、自分にとってのそれは三代目 J Soul Brothersだったという人も、ゲスの極み乙女。だったという人もいるかもしれない。

そういった“みんな聴いてる音楽”を聴いていなかった、あの頃のクラスメイトがシバノソウだ。

両親の影響で早くからディープな音楽に触れて育ったこともあって、周りの子たちとは話が合わなかった。代表曲の1つ『スクールフィクション』には「青春なんてどこにもなかった」と歌われている。高校生活は居場所を見つけられないまま終わった。

ところが、彼女の作る曲はとびきり耳馴染みのいいポップなもの。それはちょうど、あの頃クラスで流行っていたあのバンドと並んでも遜色ないような。

なぜ彼女は、自分の聴いてきた音楽の影響を直接的には出さず、あくまでポップにこだわるのか。答えは気持ちいいほどシンプルだった。

 

――音楽に関しては、ご両親から影響を受けた部分が大きいということですが。

父も母もとても信頼してます。センスだったり、やってきたこと、話してる内容。単純に好きなんですよ。「アドバイスをくれる」っていう感じではなくて、「喫茶店にハマってる」って言えばいいお店を教えてくれるような感じで。押し付けてくるようなところはないんです。

 

――音楽の原体験はどんなものだったんでしょうか。

小3で初めて行ったライブが、お母さんに連れられて行った筋肉少女帯の再結成ツアーなんですよ。衝撃でした。中2くらいの頃にギター始めたときも、母から「曲なんかこれでいいんだから」って人生のCDを渡されて。

※筋肉少女帯:80~90年代サブカルシーンの寵児・大槻ケンヂがヴォーカルを務めるバンド。奇抜なパフォーマンスで脚光を浴びた。
※人生:俳優としても活動するピエール瀧と、DJとして世界的に活躍する石野卓球による「電気グルーヴ」の前身グループ。同じく奇抜なパフォーマンスで知られる。

 

――というと、お母さんはいわゆる、ナゴムギャル……?

※ナゴムギャル:筋肉少女帯や人生が所属したインディーズレーベル「ナゴムレコード」の熱狂的女性ファンのこと。一様に奇抜なファッションに身を包んでいたことで知られる。

そうですそうです。お母さんは高校生の頃、赤いランドセルにリコーダー差してライブに行ってたマジの人。オーケンさんのことは「モヨコさん」って呼びますよ。

※モヨコ:大槻ケンヂが活動初期に名乗っていた名義

 

――筋金入りだ! ちょっと憧れます、「ナゴムギャルの娘」って肩書き。

いや、それなりにしんどいっすけどね……。
私としては、家にあったCDが筋肉少女帯だから聴いてただけ、家にあった本が中島らもだから読んでただけで、普通に生活してるだけなのに、徐々に周りとズレが生じはじめていって。

※中島らも:80〜90年代に活躍した作家・エッセイスト。

 

――触れている文化の違いは、人間関係に大きく影響しますよね。どうしても馴染めない、浮いてしまうところが出てくる。

小学校高学年くらいから周りとのズレを感じはじめて、「普通の子になりたい」って気持ちを強く持つようになっていきました。中学受験をしたのもそういう気持ちが理由としてあったと思うし。

 

――「普通の子」にはなれましたか?

私、初めて自分で買ったCDが嵐なんですよ。中1の頃かな。「普通の子」になろうとがんばってた時期だったので。どの曲だったかは忘れちゃったんですけど……。
がんばってたんですけど、中1の3学期に入った頃から、「普通の子」になろうとするのも疲れちゃって。そこから改めて、自分が本当に好きな音楽を探して聴くようになったんです。ナンバーガールやSUPERCAR(スーパーカー)、洋楽だとマイブラとか。

※ナンバーガール:現在ZAZEN BOYSのメンバーとして活動する向井秀徳がかつて在籍したバンド。独特な抑揚をつけたヴォーカル、オリジナルのコードなどの異彩を放つ音楽性が多くの後進に影響を及ぼした。

※SUPERCAR:現在音楽プロデューサーとして活動するいしわたり淳治がかつて在籍していたバンド。男女ツインヴォーカルで、キャリアの後期は電子音を取り入れた音楽性に発展していった。

※マイブラ:My Bloody Valentine(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)。深く歪んだギターで奏でる幻想的なサウンドや囁くようなヴォーカルといった特徴を持つ「シューゲイザー」と呼ばれるジャンルの代表格。

――どのバンドも世代はまったく違いますよね。同級生でこういうバンドを聴いている子は?

いませんでしたね。

 

――ここまで様々なバンドの名前が上がりましたが、これらの影響を直接的に感じさせる部分は、シバノさんの楽曲にあまりないように思います。

それは意図してやっていることなんです。自分の好きな音楽を自分でやるのはちょっと違うというか。私は、ただ自分が好きな音楽をやるのなら、スタジオで自分1人でやればいい、商業に乗せなくていいと思っていて。
私はある特定のジャンルのファンが喜ぶものだけを作りたいわけではなくて、もっと間口の広い、普遍的なものを作りたい。自分と同じくらいの歳の人も、おじさんもお姉さんも聴いてくれるような余地を残していたいんです。

 

次回の記事では、あえてポップな曲調で多くの人に届けたいと願う、彼女の目指す音楽とはどういったものなのかという点をさらに深く探っていく。

次回(中編):キラキラした恋の歌は責任が取れない――シバノソウインタビュー

#quickbite (動画インタビュー)
・#quickbite 0002 – シバノソウ

sessions (フォトセッション)
・sessions 0002 – シバノソウ

 


[PROFILE]
シバノソウ
■公式サイト:http://shibanoso.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/soshibano

 


[リリース情報]
シバノソウ 1st mini ALBUM 『EVERGREEN』
■販売サイト:https://tower.jp/item/4774557

収録楽曲
1.「EVERGREEN」
作詞 作曲 シバノソウ 編曲ヤブユウタ(SEVENTEENAGAiN)
2.「青がにじむ頃」
作詞 作曲 編曲 中村もも(shuto)
3.「スクールフィクション 」
作詞 作曲 シバノソウ 編曲 that’s all folks
4.「18歳」
作詞 作曲 シバノソウ 編曲 that’s all folks
5.「毎日が夏休み」
作詞/作曲シバノソウ 編曲 管梓(For Tracy Hyde)

 

平石 ゲル
Writer
平石 ゲル

ライター。音楽・ファッション・エンタメ系メディアに寄稿。

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